ざまみろ、お前は俺が好き 3



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「俺にお前と付き合うって言わせたとき、ひとりですごい盛り上がってただろ、お前」

後始末は思った以上に屈辱的だった。まるで赤ん坊扱いである。

「言っとくが、その前に結論は出てたんだからな。お前のプレイで付き合うって決めたわけじゃねえ」
「素直に気持ちよかったって言いなよ」

鳥見は顔色も変えないで、色男らしく俺の髪を梳いてくる。実に憎たらしい。俺は顔をそむけ、背中を向けた。

「お前が勝ち誇るから、嫌だ」
「当然だろ。ぼくは負けるわけにはいかないから」

そう言って俺をするりと抱き込んでしまう。身体を包む熱と呼吸を、俺は必死に無視した。

「俺なんか好きな時点でお前の負けです」
「なるほど。そういう見方もあるか」

鳥見は真剣に考え込んでいる。実にかわいくない。

「そんなに勝ちにこだわるなら、付き合うのやめる?」

軽い声で訊けば、鳥見はあきらかに苛立った。

「次からは、そんな軽口も言えないぐらい鳴かしてあげるよ」
「こだわるねぇ、俺に」

俺は笑ってやった。やっぱりこいつはからかうと面白い。

「父さんは役人なんだ」

鳥見は唐突に言った。

「でしょうね」

俺は精いっぱい皮肉った。今そんなマウントをとるタイミングだっただろうか。からかわれてムキになったのか。

「小さいころから英才教育。塾通いがきつくて、まともな友だちづきあいもできない。成績が少しでも落ちると怒られるから必死でさ。息苦しい家だった」

鳥見は疲れた声で、ぽつぽつと話した。あ、これ、真面目な話か。

「父さんが敷いたレールより自由な生き方がしたくて、外大を選んだ。すごく怒られたよ。なら首席で出ろ、在学中にしっかりコネを作っておけって。誰にも負けるなって」

なるほど、こいつは父親の命令をごく忠実に実行していたのか。

「楽じゃないよ、全然」

俺をめちゃくちゃにした男を、俺は憐れみ始めた。
鳥見は俺を抱く手に力を込める。

「君を負かすと安心するのは、君がうらやましいからだ。なんでそんな楽しそうなんだよ。おかげで勝ってる気がちっともしない」

おでこらしき固い物体が俺の後頭部にごんと当たった。

「君の言う通りだ。なんで君なんか、好きになっちゃったんだ」

有能な頭蓋骨がぐりぐりと俺の頭に擦りつく。俺は思わずくすりと笑った。

「ずいぶん重いピロートークだな」
「うるさいな」
「お前ももっと気楽に生きたら? 大丈夫、見てなきゃバレないって」

鳥見は長いため息をついた。

「……君が心底うらやましい」





「どうだ、うらやましいだろ」

鳥見のソファに座り、俺はポテトチップスを開けた。
ばん。つんざく悲鳴。B級ホラーを映したテレビが、開幕からチープな効果音を鳴らしている。
いつもの東京での暮らしが戻ってきた。後ろで鳥見が苛立っている気配がする。よしよし。やはり人生はこうでなくては。
だがこの夜は前代未聞の事態が発生した。
鳥見がため息をつきながら、横に座ってきたのである。

「これのどこが面白いんだ」

鳥見は文句を言い、勝手に袋に手を突っ込んでポテトチップスをつまんでくる。

「面白いと味がわかんなくなるだろ。芋が主、映画が従」

俺の答えに、鳥見は一瞬考え込んだ。

「……君は合理的なのかそうじゃないのかわかんないな」

鳥見の人生に不要だったはずの芋の破片が、さくりと音を立てて鳥見の口に消えていく。

「うまい?」
「そこそこ」

俺は乱暴に鳥見にもたれかかった。

「重い」
「な? 無駄ってうまいだろ」
「なんで君が勝ち誇るんだ」

あきれながら、鳥見が俺の頭を撫でてくる。
俺はにやりと笑って、負けじとポテトチップスを口に放った。



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